原形質分離
ここは地域の底辺高校だ。分かりますかって質問する。するとそんなことが分かるならここにいませんと答えてくる。馬鹿野郎って思う。それじゃあ私はあまりにも悲しすぎる。授業なんかやるもんかって思っても許されるだろう。この学校でユキノシタの裏面表皮細胞を使って原形質分離の実験をした。観察して気がついたことをなんでも言ってみて下さい。同じ視野の中に原形質分離を起こしているものと起こしていないものが両方あります。原形質分離している細胞は色が濃くなっています。・・・鋭い観察力だった。どうしてだろう。説明してみよう。再び浸透圧説明機を見せてやればすぐに分かる。。原形質分離を起こしているものの割合はどれぐらい。・・・。考えて実験すると面白いって言ってくれた。

5年以上も前のことだ。1年間のマラヤ大学の日本留学生の教育を終えて帰国した。それ以前からそうだったと思っているが、日本の学校教育は危機的状況にあったと思っている。外見上は暴力的に荒れた様子はなかった。それでも教育が成功しているとは思えなかった。不登校などといった心を病む生徒が多数現れるようになっていた。大学進学と単位修得で脅しまくられた子供達には逃げ道がなかったのだろう。
 一年生前期の試験が終わった。何人かの進級が危ぶまれる生徒がいた。親は学校へ呼び出されることになる。警告は通常教頭がやるものだ。教務でもなく教頭でもなく、一切を私一人に任せてもらった。この生徒達の人間としての優しさとか素晴らしさとかを話した。これが出来なくても人間が悪い訳じゃない。負けないで今までのように根気強く頑張って欲しい。そんなことを言って帰した。そのうちの一人は3年後卒業式が終わると私の所へやって来て、お礼を言って別れて帰っていった。
 やがてゆとり教育と言われる時代になった。少しは期待はしたが、成功するとは思えなかった。教える内容は減ったが、学校は何も変わらなかった。ゆとりと言っても時間が余るはずはないが、学校が変わらなければ余る。余った時間をどのように使ってきたのだろう。京都大学の学生は割り算が出来ないらしい。大学の先生が言うのだからそうなんだろう。手動の計算機が素敵だ。兎に角0になるまで引き続ければ良い。割り算を考えるならきっとこれが良いだろう。古道具屋で見つけたが買えなかった。さて、割り算が出来ない原因をゆとり教育にするのは単純すぎるが、分かりやすい。日本社会にはすでに余裕がなくなっていたのだろう。焦りが支配者になっていた。
 
 失敗の原因を追及しないまま脱ゆとりの時代に逆戻りした。振り子は逆に振り始めた(?逆に振るとどうなる。時が逆に進むのか。逆の振り方とはどんな振り方かわからない。同じだろう。)。そんなことは予想されたことだった。けれども、心配することはない。真の原因を突き止めていないのだから、再び失敗するだろうから。明治時代、招かれてやって来たドイツ人医師のベルツは落胆した。日本に学問の樹木を植えようとしたが、日本は果実だけを欲しがった。種を蒔かないで、苗を育てないで、実だけを求めた。この国には学問は発展しないだろう。(はっきり記憶していない???。)そんなことを書いている。あれから百年近くたったが、彼の言葉は真実だったのかどうか定かではない。けれど。日本は世界第二位を目指す国になった。なんで一位を目指さないのかよく分からないが、特許は一位しか取れないが、1も2もたいして違わないことにしよう。こういう時代にもう一度ベルツの言葉に耳を傾けてみる価値はあると思う。苗を植え育てないのであれば、世界二位の国にもなれないだろう。時代が戻ったら、日本社会は安心に違いない。あまり教育の問題点を議論しなくなった。けれどもたいして何も解決されないままだと思っている。
 これで学校教育から完全に足を洗うことになった。私立高校2校から講師の依頼があったが、断った。新任指導の依頼が2校からあったが、全部断った。私に何を期待しているのか分からなかったからだ。進学率を上げるためだけならそんなに難しい話ではないだろう。徹底して問題演習をやることだ。暗記するほどにやれば良い。昔数学のチャートの参考書を読んでいる生徒がいた。繊細な鋭い感性を持った生徒が脱落するかもしれないが、気にしないことだ。けれどもそれで得られるものは何だろう。0ではないだろうと思うが、マイナスでなければ幸いだ。

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原形質分離
浸透圧のモデル実験

赤い細胞はユキノシタの表皮細胞
3 濃いショ糖溶液に浸した
2 6%ショ糖溶液に浸したもの

3,2で何が違う

「アクワイヤー桜」 ここは科学実験塾です。 塾生を募集しています

サイエンスじゃらんーじゃらん
           本当は ジュクじゃが
アクワイアー・桜

-面白い実験でたしかめる生物の不思議-

写真の左上は浸透圧説明装置