怠け者の蟻がいるのか
 
私はアリの名前を知らない。これからアリの話をしようとしているのにだ。そんなやつの言うことは信用できないって言うかもしれないが、気にしないことにしよう。 クロオオアリって言うのかな。普通にみるアリだ。働き者の代表だろう。いつ仕事に出て行くのか、いつ帰宅するのか私は知らない。暖かい夏の日なら夜だって歩いていることがある。散歩ってことはないと思うから仕事だろう。巣から出て行ったアリはどうやって帰ってくるのだろうか。誰かが太陽を基準にしていると言った。だから数時間暗いボックスに入れて放してやると巣の方向とは違う方へ行くという実験が紹介されていた。本当なんだろうか。ミツバチならそうかもしれないが。アリは巣から数mの範囲ならほぼまっすぐに巣へ帰ることが出来ると思う。太陽で巣の方向を調べているのなら、夜逃げをするならかまわないが、夜巣から出たら帰れないだろう。サキイカを細かく裂いて(ポスターカラーで色をつけてもかまいません。これならどこから持ってきたかがわかります。.)小さなシャーレに入れて巣の近くにおくとアリが集まってきて持って行く。この時サキイカの部分をつかんでアリを釣り上げる。そのまま遠くへ持って行って放してやる。サキイカはよく見えるからこの行くへを観察すればいい。巣から数mの範囲なら間違いなく簡単に巣へ帰ることができる。遠くに放すとあらぬ方へ自信を持っているかのように歩き出す。しばらく行って方向を徐々に変える。巣から数mの範囲に入れば確実に巣に戻ることができる。私はだから巣の近くには臭いが付けてあるのだと思っている。
 アリは働き者の代表だと思っていたのに、誰かが怠け者がいると言った。この怠け者を排除してもまた怠け者が何%か出てくると言った。なるほど面白いと思った。人間の社会と同じだと思うとさらに面白かった。アリの通り道にサキイカを置いて石を載せて固定する。すると通りがかり?のアリが集まってくる。(背中にペンキでマークを付けておくとサキイカに集まるアリは同じ個体だと思える)くわえて持ち帰ろうとするアリが結構いるが、興味を持って近づいてくるけれど決して持ち帰ろうとはしないアリがいる。怠け者だろう。巣の近くの獲物にもこのアリは興味を示すだけだ。やっぱり怠け者だろう。何もしていないように見える怠け者のアリが結構沢山いる。しかし、私はこの働き者の怠けアリに申し訳ない失礼な誤解をしているのではないかと思う。ちゃんと重要な仕事をしているのだろうと思う。自分たちが活動するのに必要な道路建設をしているのだろうと思っている。沢山の怠け者で臭い付けをしているのではないだろうか。

 アリは臭いで社会生活を送っているのではかと思う。マッサージ器の先に細いビニール針金をつけて震動させる。これを巣の近くに差し出すと沢山のアリが攻撃にやってくる。最初に攻撃目標に臭いを吹き付けるのだろう。震動を止めるときっと臭いのついた仲間内で戦いを始める。
 一つの巣の近くにサキイカを置いておくとアりが取りに来る。時々、口にくわえて反対方向へ一目散に走っていくアリがいる。どうして反対方向へ逃げるように行くのかと思って追跡をした。随分離れた別の巣へ持ち運んだ。この個体は敵地へ入り込んでいることを知っているのだろう。急いで持って逃げていくように見えた。さきイカをくわえたアリを釣り上げて別の巣の近くへ置くと急いで持ってその巣穴とは反対方向へ運んでいく。

 畑の大きな石をどけるとたいていこのアリの巣がある。アリたちは大騒動だ。卵や子供や蛹を持ち上げて避難をする。なんで子供たちが分かるのだろうか。小さな瓶に蛹を集めて入れる。そこへ発泡スチロールの小さな片を入れて、一緒にかき回す。この発泡スチロールを置いてやると、子供でもないのに避難先へ一緒に持って行くだろう。ついでに同種でも巣が異なると大喧嘩をするくせにこの発泡スチロール片はどの巣でも同じだろう。アリはアブラムシを攻撃しない。共生と言うらしいが、この言葉で何かが解決したわけではない。異なる生物がお互いに利益を得て一緒に暮らすことがあるということが分かる程度だろう。私はアブラムシはきっと攻撃抑制物質を持っているのだろうって思っている。発泡スチロールの時のようにやれば分かるかと思ったが、強く掻き回されたありは殺人化学物質を放出するように思える。アリもアブラムシも弱って死んでしまう。

 いつか授業で使おうともくろんでいたがついに使えなかった。沢山の生徒が校庭の周りでウロウロしていては皆、怠け者に思われるだろう。怠け者ではないことを証明するのは面倒だ。私がそばについていれば証明の必要はないだろうが、幼稚園の子供じゃない。同種の異なる巣のアリの戦いの様子を示すのは教室でもそんなに難しくないが、沢山用意するのは疲れる。まだ確信が持てないところがあるし、アリの識別する化学物質に辿り着くことが出来ないから面白くない。
ところで申し訳ないが、怠け者の蟻は本当はどんな蟻なんだろう。
トップへ
アリさんアリさん何処へ行くの。実験

-面白い実験でたしかめる生物の不思議-

スチロール球を巣に運び込むアリ マッサージ器の振動に攻撃を加えるアリ 共生

サイエンスじゃらんーじゃらん
           本当は ジュクじゃが
アクワイアー・桜