サイエンスじゃらんーじゃらん
           本当は ジュクじゃが
アクワイアー・桜

ニワトリの発生の様子を観察させようと思った。不思議なことに脊椎動物へ進化してきたグループの発生の過程は基本的には皆同じだ。けれどもニワトリの発生はちょっと難しい。卵は何も食べないで約20日でヒヨコになる。ついでに何処かに異常があったって平気だろう。仮に脳が出来なくても発生は進んでいくことがあるだろう。ニワトリの卵には卵黄が大量にあるから、分かりにくい。難しいことは分からなくても良い。私も分からないから。けれども生きていることを感じるには最も良い。卵に直径2cm程の穴を開けパラフィルムで蓋をして中が見えるようにした。孵卵器はない。保温機か酒の燗をするやつを使うしかない。受精卵を道の駅で買ってきた。失敗した。卵はただ温めれば良いという訳ではない。@人間の体温よりやや高い適温を保つこと A湿度を保つこと B卵を絶えず回転すること。転卵と言うが、1時間に一回。無理だ。最低でも1日3回朝、昼、帰り。私が時々やれば、正常な卵なら雛になれる。
何が悪いか分からなかった。卵が問題かもしれないと思って、ニワトリ屋を探した。田舎の面白い卵屋を見つけた。ここの卵はえらく元気が良い。とりあえずうまくいった。で、さらに20個ほどもらいに行った。ただで良いと言われたから。お礼に菓子折を持って行ったのでむしろ高くついた。ニワトリを貸してあげようかって言われた。う〜ん。ちょっと驚いた。これとこのニワトリなら100%大丈夫だと言われた。そうかもしれないが、学校では困る。鄭重に断って、卵だけを受け取った。鳥インフルエンザが遠くで流行し始めて、近づくことさえ出来なくなってしまった。郵送してくれる新しい大きな卵屋を探した。子供向けの生命体験館のようなものを作ったらどうかと提案したが、今はそんな余裕はないようだった。
 やはりうまくいかない。原因は転卵時に温度が下がってそのまま温度が上がらないのだろうと思った。それでも最初の3日間は温度が下がっても問題はない。色々な器官が出来てくるとヒヨコが低温ですぐ死んでしまうように発生途中の卵も死んでしまう。それでも生徒たちは興味を持って熱心にやってくれた。卵は廊下に置いた。毎日転卵に来てくれた。30日程度たった穴が開けてない卵。もう駄目だろうと思った。きっと駄目だろうから割ってみよう。皆の前で割った。生きていた。足も羽も出来ていた。わあーとかぎゃあーとか叫んで、私は非難の的となった。昔はこの実験で生まれたヒヨコは幼稚園で引き取ってくれたが、鳥インフルエンザが流行して引き取ってくれるところがなくなった。
卵を燗しよう
陥入 原腸胚の形成説明器

カエル卵、陥入説明器内胚葉は回転して陥入します

簡易孵卵器

-面白い実験でたしかめる生物の不思議-

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