サイエンスじゃらんーじゃらん
           本当は ジュクじゃが
アクワイアー・桜

トンボは背泳飛行、クマバチは背面スケーティング、アシナガバチは夜なら落ちるしかない


 
トンボの背中に麦のストロー(接着剤でつきやすい)が良いだろうと思うが、瞬間接着剤で接着し糸を通して直線上にしか飛べないようにする。下から光を照射するとそこでトンボはひっくり返って飛ぶ。所さんの目がテンというTVを見て、そんな話をしたら生徒がやってみたいと言ってきた。掃除の時間なんかもうどうでも良かった。トンボは上手く飛行できるようにというか、空中で上下を認識するのに光の方向を基準にしている。光に背中を向けて飛ぶ。多分背光性と言うと思うが、インターネット上ではこの言葉を違う意味で使っているので、私が違っているかもしれないが、どうでも良い。私は上下を認識しないと飛べないと思っていたが、最近はそうでもないと思っている。見てのとおり光が下から来るとひっくり返って飛んでいるけれども、飛んでいるからだ。アシナガバチの巣の下に大きな鏡を置いてさらに巣から太陽が見えないようにして物干し竿で叩いてやると、ハチが怒って攻撃に出てくる。けれどもハチは鏡に向かって下へ飛び出してくる。こんなハチは全く怖くない。鏡に激突して体勢を整えて再び飛んでいく。激怒して攻撃に出てきたはずなのにこの時ハチは何で出てきたのかその目的を忘れてしまったように見える。帰りも間違って床へ行くものいる。太陽を見た瞬間に何かのスィッチが入るようにみえる。この時ハチは上下逆に飛行していると思う。脚が上にあるから、鏡に後頭部から激突するしかないだろう。しかし私のビデオカメラではスロー再生にしても不鮮明で確認できなかった。光の方向で体の姿勢を決めている生き物はトンボだけじゃない。ブラインシュリンプやホウネンエビ、トンボのヤゴもそうだ。メダカもそうだと言う実験がある。けれどもメダカはトンボのような訳にはいかない。下から光を照射してもひっくり返って泳ぐことはない。メダカはトンボなどと違って重力を認識する目以外の器官があると思う。適当な試験管に水を入れてグッピーを逆さにして入れる。試験管を少し傾けて、光を当てると、暴れて光に背中を向ける。トンボの行動と同じじゃないかと思うけれど、そうじゃない。メダカやグッピーは光の方向へ体を向けようとしているだけだと思う。頭を明るい方へ向けようとすると背中が光の方を向くとになる。ついでに試験管内で逆さになったグッピーは泳がないと自然に底へ沈んで行ってしまう。けれども泳ぐとどんどん底へ行ってしまう。魚には地獄のような環境だろう。しかし、魚はたいしたものだ。昆虫などと違ってバックすることが出来る。人間は後戻り出来るかできないかを私は知らない。あまり長時間この環境にしておくとグッピーは死んでしまう。試験管の下を黒い紙で覆っておく。沈んでいくと頭から暗くなってくる。グッピーは大騒動だ。体の向きを変えることが出来ないから。泳げばもっと暗くなる。バックするしかない。なんかグッピーに「ごめんね」っ言わないといけないよう気がしてくるだろう。
 中型程度の水槽にクマバチを入れて蓋をする。透明の面を下にしてその下方から光を当てる。水槽面を歩くときはクマバチは全く普通に歩いている。ところが、飛行しようとすると体がひっくり返って上下逆転をする。クマバチは水槽の底で背中を下にしてスケーティングをすることになる。ガラス面を滑って行くことになるが羽を震わせて飛んでいるのだ。
 トンボだって逆さでもちゃんと飛べると思う。けれども逆さに飛ぶと脚は上を向いている。飛行は出来ても着地しようとすると後頭部から胴体着陸をするしかない。無事正しく着陸するために明るい方へ背を向けて飛んでいるのだろう。飛行機だって逆さ飛行が出来る。けれども逆さになった飛行機はどうやって着陸したら良いのだろうか。(ひょっとすると逆さになって下へ向かって飛び、地面に頭から激突するかもしれない)
 こんな話をすると結構喜んでくれることがある。廊下を通りかかった数学の先生を生徒達が呼び止めた。面白いから聞いていけって言われた先生は戸惑いながら入室して一時間を無駄に過ごした。けれどもその後何回もこの先生も授業を聞いて、何回も無駄な時間を過ごしてくれた。

 どうしたものか、なかなか終わらない。塾の宣伝でもすればいいのにって思いますよね。塾はそのうちと言いながら一年は過ぎた。生徒さえ集まればいつでも出来る。小学生向きの面白実験にすれば良いのかもしれない。けれども、当地には無料のサイエンスワールドと言う施設がある。昔はここをメイン舞台にして多分日本で始めて高校生に学校で大腸菌のDNA組み替え実験を展開した。ちょっとだけ背伸びをしたらいい。それが合い言葉だったかもしれない。けれども今はこの施設とは赤の他人となった。私が目指しているものとは随分違ってきた。さて、暇になって2年目だ。ごめんなさい。もうちょっと暇ついでにこのまま書こう。


 昔、ちょっとだけ草木染めに興味を持った。染色する布はきっと絹の方が良いと思ったが、学校でやるには安価な木綿しかないだろうと思った。本に書いてあるような訳にはうまくいかなかった。タマネギの皮はもちろん試してみた。イチイや、茜の根も採集してきた。クサギの実は水色に染める少ない染料だと読んで、集めてもみた。沖縄へ修学旅行に引率で行ったときは藍染めを体験してくるしかないとも思った。結構やってみたが染まる理由も染まらない理由もよく分からなかった。発色の仕組みなんかはもっと分からなかった。満足が出来るものにならなかった。そのうち心の何処かに隠れてしまった。
 国語の先生と自作の和紙に自分の俳句や短歌を書く授業をやった。そうしたら染め物でやってみたいと欲が出てきた。藍染めの臈纈染めが良いだろう。やってみて楽しいことが第一だから、絞り染めも板染めもやれるように用意をした。染め物の原理は私が説明をした。イオンでも良い、水素結合でも良い何らかの方法で布に染料を結合させることだ。藍染めはそれとはちょっと違う。オレンジUという色素で色々な布を染色して、原理を説明したかったが、この色素が手に入らなかった。
 実験というか染色を始めたら、生徒が一人やって来た。こういうのは僕は苦手です。板染めか、絞り染めをしたかったようだ。ひょっとしたらこの子は紐が上手く結べないかもしれないと思った。ゴムで良いからと言って安心させた。穴の開いた板で布を挟んでこうするとこのように染まるねって仮に見せてやった。彼は一生懸命やった。ゴムで良いと言ったのにタコ紐を巻き付けて自分で縛ってきた。2列で円形に配列した水玉模様がきれいに染め出ていた。もう一枚作りたいと言ってやり出した。
 授業は終わった。教室からめいめい皆が出て行くと、彼は私の前に立った。何だろうと思ったら、ぺこりと頭を下げてありがとうございましたって言った。よほど嬉しかったのだろう。明日への力になってくれたら幸いだ。
 最後にけれども、臈纈染めは蝋を洗い流すのに極めて大変だった。実験準備室は大変なことになってしまった。愚痴をこぼさないで片づけて頂いた理科助手の先生には感謝するしかなかった。しかし、この授業は国語・理科・理科助手、皆で準備をしてきた。満足できないところもあるかもしれないが、生徒にもこれが今私たちができる最大の準備ですって言った。そうしたら、「総出だね」って言ってくれた。何か嬉しかった。
逆さになって飛ぶトンボ
クマバチの背面スケーティング

鏡に向かって落ちるアシナガバチ

藍染め の 科学
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