クモの糸
 クモの巣がある。虫を捕るからありがたい糸だと言える人がいる。全くそうは思えない人もいる。しかし日本のクモはたいてい毒を持っていない。心配することはない。どちらかと言えば善良な地球住民だ。スピーカーの先とか顔面マッサージ器の先にこよりをつけてこれでクモの巣を揺すってやるとクモがやってくる。コガネグモなら腹部から突起が立ち上がって忍者のような糸を発射する。ちょっと格好良い。オニグモはマッサージ器を乗り越えて、手に飛びついてくることがあるから、心臓が弱い人は近づかない方がいいだろう。でも、結構面白い。クモが釣れそうになる。ティッシュをちぎって投げつけるとひっついてぶら下がる。ひっつくってことは糊が着いているか、それとも・・・。ジョロウグモは振動に騙されるそれとも何だろう。ひっつき虫って知ってるね。虫じゃない。植物の種だ。服に付くけど、糊がある訳じゃない。何というのだろう。接着バンドというのかな。表面にトゲトゲがでている。このトゲトゲで接着する。ルーペで見れば分かる。ルーペはね。目に近づけてその顔をそのままひっつき虫に近づけて見るんだ。クモの糸はそうぢゃない。トゲトゲなんてついていない。糊が着いている。顕微鏡で見れば糊の粒が見える。
 クモの巣にスプレーペンキを吹き付けて見えるように色を付ける。画用紙に少し薄めた洗濯糊を塗りつけてクモの巣に貼り付ける。周囲の糸をハサミで切り取るとクモの巣を取ることが出来る。クモの種類によって糸の張り方が違う。網の方向も違う。クモの種類というか狙う獲物によって糸の幅とかが違うのだろう。
 さて、クモの巣を採取するのにちょっと不思議な方法をとりました。・・・・。何処がおかしいのでしょうか。誰も答えないと思ったのに答えた者がいた。「なんで洗濯糊なんか使うんですか。」ティッシュペーパーがくっつく訳だから、クモの巣には糊が着いているわけだ。やってみて下さい。画用紙ではデコボコがありすぎてくっつきません。諦めては駄目です。ガラス板とかOHPシート(ベニヤ板の上に置いて使います)、アクリル板ならペタリとくっつきます。ところがちょっと困った問題が生じます。糸が見えません。今更ここでペンキを吹き付けたらさらに困ったことになります。黒板消しに濃い色のチョークの粉をつけて、吹きかけてやる。糸の糊の部分にくっつきます。ティッシュペーパーで拭き取ってやれば、網の糊の部分に色がつきます。これで見えるようになる。とり方が違う同じクモのクモの巣ですが、ちょっと違う。何処が違うのでしょうか。見えないクモの巣を見えるようにするにはまだ方法があります。生物が作り出した糸ですから、きっと炭水化物かタンパク質で出来ているのでしょう。タンパク質ならニンヒドリンを掛けてやれば紫から青色に発色してきます。でも、不思議な結果になった。粘球は発色するが糸はたいてい発色しない。防水加工がしてあるのかもしれない。
 生徒を外へ連れ出してやってみました。けれどもなかなか難しい。手頃なクモの巣が見つからなかった。結構沢山必要だ。オニグモ、ジョロウグモ、コガネグモなどの網が手ごろだと思う。オニグモは夕方網の位置を確認して実験に使うことにしておくと、実験の時間にはすべて無くなっている。なかなか良い網だが、実験には使えない。ちょっと不満だったが、ギンメッキゴミグモの巣しかなかった。半分半着な実験になたような気がする。けれども考えてみれば面白いだろう。クモはクモの網の上を歩く。糊があるからひっついちゃうだろう。誰かがクモは糊が着いていない糸の上を歩くと言った。確かに糊が着いていない縦糸に脚を掛けていることが多いが、それは横糸は下へ緩むからだろう。必ずしも縦糸にしか脚を掛けないわけではない。クモの目は顕微鏡の目だろうか。それとも無数の糊を付けたその粒の位置を全部記憶しているのだろうか。そうなら私たちはクモの脳に学ぶことが沢山あるだろう。クモだって神様じゃない。あの糊には体がひっつくことはないのだろう。クモを捕まえてクモの巣にぶっつけてみたら良い。どんな体勢でクモの巣にぶつかってもひっつくことなんてないだろう。教室でコガネグモの糸の噴射をみる
 教室でコガネグモの糸の噴射をみる

 
怠け者の蟻がいるのか
 私はアリの名前を知らない。これからアリの話をしようとしているのにだ。そんなやつの言うことは信用できないって言うかもしれないが、気にしないことにしよう。 クロオオアリって言うのかな。普通にみるアリだ。働き者の代表だろう。いつ仕事に出て行くのか、いつ帰宅するのか私は知らない。暖かい夏の日なら夜だって歩いていることがある。散歩ってことはないと思うから仕事だろう。巣から出て行ったアリはどうやって帰ってくるのだろうか。誰かが太陽を基準にしていると言った。だから数時間暗いボックスに入れて放してやると巣の方向とは違う方へ行くという実験が紹介されていた。本当なんだろうか。ミツバチならそうかもしれないが。アリは巣から数mの範囲ならほぼまっすぐに巣へ帰ることが出来ると思う。太陽で巣の方向を調べているのなら、夜逃げをするならかまわないが、夜巣から出たら帰れないだろう。サキイカを細かく裂いて(ポスターカラーで色をつけてもかまいません。これならどこから持ってきたかがわかります。.)小さなシャーレに入れて巣の近くにおくとアリが集まってきて持って行く。この時サキイカの部分をつかんでアリを釣り上げる。そのまま遠くへ持って行って放してやる。サキイカはよく見えるからこの行くへを観察すればいい。巣から数mの範囲なら間違いなく簡単に巣へ帰ることができる。遠くに放すとあらぬ方へ自信を持っているかのように歩き出す。しばらく行って方向を徐々に変える。巣から数mの範囲に入れば確実に巣に戻ることができる。私はだから巣の近くには臭いが付けてあるのだと思っている。
 アリは働き者の代表だと思っていたのに、誰かが怠け者がいると言った。この怠け者を排除してもまた怠け者が何%か出てくると言った。なるほど面白いと思った。人間の社会と同じだと思うとさらに面白かった。アリの通り道にサキイカを置いて石を載せて固定する。すると通りがかり?のアリが集まってくる。(背中にペンキでマークを付けておくとサキイカに集まるアリは同じ個体だと思える)くわえて持ち帰ろうとするアリが結構いるが、興味を持って近づいてくるけれど決して持ち帰ろうとはしないアリがいる。怠け者だろう。巣の近くの獲物にもこのアリは興味を示すだけだ。やっぱり怠け者だろう。何もしていないように見える怠け者のアリが結構沢山いる。しかし、私はこの働き者の怠けアリに申し訳ない失礼な誤解をしているのではないかと思う。ちゃんと重要な仕事をしているのだろうと思う。自分たちが活動するのに必要な道路建設をしているのだろうと思っている。沢山の怠け者で臭い付けをしているのではないだろうか。

 アリは臭いで社会生活を送っているのではかと思う。マッサージ器の先に細いビニール針金をつけて震動させる。これを巣の近くに差し出すと沢山のアリが攻撃にやってくる。最初に攻撃目標に臭いを吹き付けるのだろう。震動を止めるときっと臭いのついた仲間内で戦いを始める。
 一つの巣の近くにサキイカを置いておくとアりが取りに来る。時々、口にくわえて反対方向へ一目散に走っていくアリがいる。どうして反対方向へ逃げるように行くのかと思って追跡をした。随分離れた別の巣へ持ち運んだ。この個体は敵地へ入り込んでいることを知っているのだろう。急いで持って逃げていくように見えた。さきイカをくわえたアリを釣り上げて別の巣の近くへ置くと急いで持ってその巣穴とは反対方向へ運んでいく。

 畑の大きな石をどけるとたいていこのアリの巣がある。アリたちは大騒動だ。卵や子供や蛹を持ち上げて避難をする。なんで子供たちが分かるのだろうか。小さな瓶に蛹を集めて入れる。そこへ発泡スチロールの小さな片を入れて、一緒にかき回す。この発泡スチロールを置いてやると、子供でもないのに避難先へ一緒に持って行くだろう。ついでに同種でも巣が異なると大喧嘩をするくせにこの発泡スチロール片はどの巣でも同じだろう。アリはアブラムシを攻撃しない。共生と言うらしいが、この言葉で何かが解決したわけではない。異なる生物がお互いに利益を得て一緒に暮らすことがあるということが分かる程度だろう。私はアブラムシはきっと攻撃抑制物質を持っているのだろうって思っている。発泡スチロールの時のようにやれば分かるかと思ったが、強く掻き回されたありは殺人化学物質を放出するように思える。アリもアブラムシも弱って死んでしまう。

 いつか授業で使おうともくろんでいたがついに使えなかった。沢山の生徒が校庭の周りでウロウロしていては皆、怠け者に思われるだろう。怠け者ではないことを証明するのは面倒だ。私がそばについていれば証明の必要はないだろうが、幼稚園の子供じゃない。同種の異なる巣のアリの戦いの様子を示すのは教室でもそんなに難しくないが、沢山用意するのは疲れる。まだ確信が持てないところがあるし、アリの識別する化学物質に辿り着くことが出来ないから面白くない。アリは働き者ですか
ところで申し訳ないが、怠け者の蟻は本当はどんな蟻なんだろう。


絹の糸を紡ぐ
 昔、若い社会の先生がやってきた。トイレの日本とヨーロッパの歴史を授業でやりたいということだった。ついては私に活性汚泥について授業をやって欲しいということだ。もちろん了解した。彼はその前にも野麦峠の話をしたいが、実際にマユから糸を取り出したいから実験室を貸して欲しいと言ってきたことがあった。もちろん了解した。
 あれから数年経った。私は生物の授業でやってみることにした。マユを手に入れるところはもちろん聞いていた。断られれば実験はやれない。そんなこともあって誠意を込めて話してきた。教育の話とか伝統工芸の話とか2時間近く話したと思う。ここはNPO法人だ。絹の製糸産業の最後の整理をしていると言った。皆が絹の生産を止めていくが、機械とか資料とかを保存しておきたい。廃業の情報を入手したら博物館とか大学と連絡を取って今はもう作れない機械を保存してくれる機関を探してそこへ送るのだそうだ。和紙は観光も含めて今でも生き続けている。絹もまたそうゆう生き方が出来なかったのだろうか。ついでに野麦峠の女工史は悲哀史として有名だが、何処でもそうだった訳ではなかったらしい。このあたりでも昔は養蚕が盛んだった。製糸会社もあったが、野麦峠のようなことはなかったそうだ。指導者というか雇用主の人間性の問題だろう。私はビニール袋一杯のマユを分けてもらって学校へ帰った。
 パスツールとファーブルの誤解から発展した激しい喧嘩のことを思い出した。絹の製糸産業は国力を示す重要な産業だった。パスツールはフランスの偉大な化学者だ。絹の研究は国の発展に欠かすことが出来ないことだった。パスツールは国の依頼で研究することになったらしい。けれども彼は化学者だった。カイコは知っていただろうがその蛹はは知らなかった。彼はフランスの偉大な昆虫学者ファーブルに教えを請いにいったのだ。パスツールは発酵を研究したことがあった。きっと親愛の意味を持ってだろうが、「あなたの家のワイン貯蔵庫を見せて下さい」と言った。ファーブルの家にはなかった。これが大喧嘩の発端だったらしい。大統領に意見が出来るほど華々しい輝いた研究生活をおくったパスツールと、苦難に満ちた生き方をしたファーブル。どちらが幸せな人生だったのだろうか。それはよく分からないが、どちらも一生懸命だったのだろうと思う。昔、まだ教師に成り立ての頃。私は学生時代は光合成の研究室にいた。大学から離れてからも何某かのその続きをやろうと思った。最低でも分光高度計が欲しかった。大学の後輩に設計図を送れって依頼した。この後輩、設計図を送ってくれたが、馬鹿じゃないとも言ってきた。買った方が早い。その通りだろう。自分だって分かっている。大学時代に購入して枕か漬け物の重しに使っていた「土壌動物学」と言う本を始めて開いた。日本にはほとんど研究者がいないと書いてあった。それなら自分だって何かできるだろうと思った。この時から私は毎日、朝、土を採取して学校へ行った。まるで分からなかった。大学の生態学の先生に弱音を吐いて手紙を送った。「焦ることはありません。ファーブルは40歳過ぎてから本格的にあの仕事を始めたのです。」その手紙を大事にしまっておいたが、今どこへいったのか分からない。教員免許証だって何処かへ消えた。どちらも今はもうどうでも良いものになった。
 ところでカイコの糸の実験の話だった。忘れるところだった。あの糸は一個について約1.8kmほどあるらしい。生物が作った糸だからきっとタンパク質なんだろう。セリシンと呼ぶ(セリシンと言っても訳が分からないが )蛋白質が繊維をのり付けして固めているらしい。高温にするとこれが溶けるようだ。ビーカーにマユを数個入れて水で煮る。割り箸でそれぞれのマユから一本ずつ糸を取る。初め沢山の糸が取れるかもしれないが気にしないで引き出せばそのうち一本になる。当たり前だ。マユを煮ながら糸をペットボトルなどに巻き付ければいいが、ダイナミックにやるなら、そのまま廊下へ引っ張り出すのも面白い。皆で協力が始まる。糸の先を持って先頭を行く者。マユから糸を引き出す者、途中を持って糸を送り出す者。廊下の端で曲がって階段を下りていった。最後に糸にニンヒドリンをかければ、やがて青から紫に発色する。結構面白くはまるらしい。いつまでも、中の蛹が見えるようになるまで続ける者がいる。だからどうってことはないように思えるが最後までやりきるって体験は大切なことだ。蛇の塗り絵だって途中で止めるならあまり教育的ではないと思う。

 
ペーパークロマトグラフィーとカラムクロマトカラムクロマトグラフィー実験
 やっともう一度クロマトグラフィー法をやろう。水性ペンに含まれる色素や入浴剤に含まれる色素は水をしみ込ませてやれば分けることが出来た。けれども水に溶けない物はこれでは何ともならない。当たり前だ。溶けない物は動かない。油性ペンの色素とか光合成色素は水ではどうしようもない。ところで光合成色素は植物の葉の中にあります。水に溶けないって言いました。ちょっと不思議だ。生物の体の中、細胞の中は水でいっぱいだ。水に溶けない物がどうやって体の中にあるのだ。光合成色素は水に溶けないから細胞の中の構造物に結合しているのだ。ジューサーで水と一緒にかき混ぜても色素が溶け出てくるわけではない。何かにひっついたまま破片になるだけだ。水に溶けない物質を分離するには有機溶媒を使う。アルコール、アセトン、エチルエーテル、ヘキサン・・・などだ。この4種類の溶媒を試験管にそれぞれ3mlほど入れます。そこへゆっくりと水を加えてみます。水はどうなるのか。アルコールとアセトンは水と混ざります。エーテルとヘキサンは水とは混ざりません。水は試験管の下へ入って2層になります。
 シソとかコリウスの葉から80%アセトンかアルコールを使って色素を抽出する。試験管にこの抽出液を入れる。ほぼ等量のエーテルを入れて、沢山の水を静かに加える。どうなるでしょうか。水は何処へ。エーテルは何処へ。緑の上の層と赤い下の層に分かれる。ちょっと歓声があがる。水によく溶ける色素は何処にあるのでしょうか。すぐ分かる。上の緑の層の液を濾紙にスポットして、ヘキサンで滲みあげる。黄色い色素が先端をいくが、後は全く動かない。面白くないだろう。エーテルで滲みあげる。全部上に上がってしまう。全く面白くなしい。半々程度にすると上のように幾つかの色素が分かれてくる。ちょっと面白くなる。この実験では水の時と違って蓋をしないといけません。どうして。やってみれば分かると思う。ついでに赤い色素はアントシアンという水に溶ける色素だ。光合成とはあまり関係がない。塩酸でも酢でも良いが少し加えて酸性にすると赤色になる。NaOHでアルカリ性にすると緑から黄色に変わる。可逆性なので繰り返してやることが出来る。さてこの赤色の色素はどんな役割を果たしているのだろうか。確かなことはまだ分からない。紫外線から葉緑体を守っていると言う話があるが、分からない。

 さあ、ついにちょっと面倒なカラムクロマトグラフィーを注射器でやる。この方法だと黄色の色素2種類、緑の色素2種類を試験管に採ることができる。でも、その前に話しておきたいことがある。この方法の基礎は学生時代に若い先生に教えてもらったものだ。彼は夜だったか夕方だったのか研究室にやってきた。私にだけ見せると言った。試料は当時使っていたもやしだ。普通のカラム管を使った。実に見事に分離した。他にも沢山の実験資料をくれた。けれども、最後に、「僕は実験データを盗まれた。」と言った。私は真実を知らない。しかし、まもなく彼は命を絶った。有名な先生の名があがった。しかし、未だに私は真実を知らない。申し訳ないが彼のデータは私には使いこなせなかった。押し入れの中に今眠っている。未だにあの時のようには分離ができない。
 ペーパークロマトグラフィー法では溶媒を滲み上がらせたが、今度は管の中を滲み下ろしただけだ。濾紙を管に詰め込む訳にはいかないから、セルロースパウダーを詰めたものだ。なかなか時間がかかる。限られた時間で最後までやるのはなかなか難しい。それでも黄色の色素は簡単に流出する。試験管に色素が出始めると嬉しくなるだろう。実験用キットを作ったが販売はしていない。無駄な有機溶媒の使用を避けることが出来ると思った。


 そろそろ終わりにした方が良いかもしれない。塾生はいない。HPは閉鎖したけれど、まだ結構訪問してくれる人がいる。

もやしは赤色で緑化
 スーパーでもやしを購入してきた。葉も根もあるが、葉は黄色をしている。植物は緑だと思っていたのにこれは黄色だ。光を当てたら緑になるのだろうか。いつかやってみようと思いながら、きちんとやったことはない。もやしの生産方法を知らない。光を当てても緑にならないのなら何か化学的処理がしてある。最も可能性が高いのはエチレンだ。(もやし生産にはエチレンを使っているのは確かだと思うが、緑化防止に使っているのかは分からない。リンゴからでるから簡単に入手できる)けれども、ここではエチレンは問題にしない。もやしは光を照射しないで発芽させていけばできる。ただし、発芽生育に何か光が関係しているように思えるから、育ちが良いもやしを作るのは必ずしも簡単でもないが。自分で作ったもやしに光を当てると緑になってくる。普通の植物は全部そうだ。イチョウは暗くてもクロロフィルa(葉緑素、緑の原因物質)を合成するらしいが、これも確かめたことがない。
 発芽を始めた種子は出来るだけ早く光が当たるところへ出なければならないのだろう。種子に蓄えられた栄養源しか使えない。無駄なものを生産していれば、貯蔵物質を使い果たしてしまうのだろう。クロロフィルの合成は光が当たるところで始めれば良いことなのだろう。さて太陽の光は色々な色の光が混ざっている。緑化には何色の光が有効だろうか。セロハンで色々な色の光を用意しよう。大型の試験管に湿らせた脱脂綿を入れタネを蒔く。試験管全体を2枚の赤いセロハンで巻く。2枚の青いセロハンで巻く。青いセロハンと緑色のセロハンを重ねると緑に見える。緑は緑のセロハンではなく青と緑色を重ねて作ります。どうしてかな。
 赤色が最も有効で緑はあまり効果がないことが分かります。けれども、それだけならそれだけです。緑化の過程で赤い光が起こさせる化学反応があることを示しています。多分ある化学物質が赤い光を吸収してクロロフィルを作ります。このある化学物質は赤い光を吸収するので青色から緑色をした物質でしょう。生徒実験で一度実施してみたが、あまり面白くなかった。結果はでるが感動させるほどきちんと考えさせれなかった。

青色光で屈光性
 植物の茎の光屈性。高等学校では今までこんな実験は出来なかったと思う。ちょっとお金がかかるかもしれないがそんなに難しい実験ではない。ちょっとお金がある学校なら2セットぐらいは用意できるだろう。顕微鏡3台分程度の費用で十分だ。すでに直視分光器があればもっと安く準備が出来る。それでも40名のクラスでは無理だろうと思う。そもそも日本の学校の理科の授業は人数が多すぎる。ドイツでは20名程度しか入れないような教室で15名程度でやっていた。15名なら5名チームでやれば3セットですむ。でもやるなら他の実験も同時に組み込むと良いだろう。
 最初青い光で先端部分が曲がる。屈曲部が基部の部分に移動して、植物体が光の方へ傾いて終わるように見える。赤い光ではあまり曲がらない。しかし赤い光では曲がらないかというとそうでもない。先端部の湾曲はみられないが、基部の部分から傾いてくるように見える。ある物質が青い光を吸収して、屈曲が始まるとしよう。それならこのある物質はどんな色をしているだろう。虹から青い光を除いて凸レンズで光を集めて見える色だろう。面白い内容のある実験だと思うが私はまだやらせたことはない。実験用の幼植物を決められた授業時間に沢山用意しなければならないからだ。発芽時間、温度など絶対失敗しない実験用苗作りのデータがいる。さらに結果観察の時間が限られている。ぼんやりしていると先端の湾曲は終わってしまう。授業が始まって実験用の苗が用意できませんでした。ごめんなさいでは格好が悪い。せっかく時間をかけてやったのにすべて傾いて終わっていたのでは涙が出るだろう。屈光性の作用スペクトル

土壌動物
 土の中の生き物を見てみよう。私は20年もやった。たいした成果もなかった。毎日朝土を採集して学校へ行った。ツルグレン装置を製作した。朝やっておけば昼頃には結構沢山のダニやらトビムシを集めることが出来た。永久プレパラートを作って顕微鏡で観察したが全く分からなかった。頭部の先に突起があって、そこにケバケバがついている。突起はどれか分からなかった。ケバケバはどれかもちろん分からなかった。一種類のダニの名前を調べるのに一年かかった。突起はこれしかないだろう。ケバケバはこれのことだ。学校の近くの竹藪や林床のダニを調べた。透明の丸いものが何か分からなかった。きっとトビムシの卵だろうと思ったが、確信は持てなかった。顕微鏡の下で孵化させるしかない。言葉で言うのは簡単だけれども、これが結構難しい。途中で乾燥して死んでしまう。寒天の上ならどうだろう。乾燥には勝てなかった。薄い部屋にしないといけないだろう。そうしたが今度は観察中にガラスの内面がくもって見えなくなる。この問題を車の曇り止めでクリアした。これでダニの卵の孵化が撮影できるようになった。多分日本にはこんなことをやっている人は一人もいないだろう。ツブダニは60個もの卵を産んだって誰かが発表した。ダニの卵はダニの大きさに比べて随分大きい。ニワトリでもあるまいし、そんなに産めるはずはないと思った。飼育室に見える半透明の白いツブはあれはダニの糞だ。これならいくらでもある。卵はもっと透明だ。糞を間違えて飼育するとカビが生えてくるだけだ。数種類のダニについて卵から成体になるまでを調べた。
 そのうち生徒が結構興味を持ってくれるようになった。3年生最後の授業だった。講義室の一番前の列に知らない顔が並んでいた。部屋を間違えたかと思った。見回してみたがここしかない。「私たちは物理の選択者です。物理は自習になりました。最後の授業だからきっとダニの話をするんでしょう。一緒に聞いていっても良いでしょうか。」訳の分からないダニの話を一時間話して終わった。
 遠足にバスで出かけるとバスガイドさんがたいていこの先生は何の先生ですかって聞く。そうすると皆一斉に喜んで「ダニ、ダニ」って叫ぶようになった。バスガイドさんが困った顔をするともう一度「ダニだ」って叫ぶ。
 こんな実験は気持ち悪いし面白くないだろうと思った。双眼実体顕微鏡は少ししかない。ルーペで見えるがこれではつまらないと思った。長い間授業ではやったことはなかったが、実施してみた。思ったより人気があった。アルコールで殺して観察したが、生きて動いているものをもっと見たがった。ここまで小さくなるとたいして気持ち悪いこともないようだった。カニムシが土の中で一番かっこいい生き物だと思うって言ったら、皆探し始めた。ついでだけれど普通の顕微鏡をもっとも低倍率にして、シャーレごとステージに置いて観察すれば双眼実体顕微鏡でなくてもよく見える。なおもうひとつついでだが、名前が分からないからって言われた先生がいた。あるところに生育するダニ類は50種類ぐらいはいると思う。けれども個体数の多い順にその個体数を記すと指数関数的に減少することが分かっている。5種類も名前を知っていれば十分だろうと思う。トビムシなら2種類で良い。
 土の中の生き物を20年も見てきた。しかしある日マレーシアへ行って日本へ留学してくる予定の生徒を教えることになった。南国だろうということは分かったが、どんな国なのか知らなかった。ひょっとしたら病気になって帰れないかもしれないなどと馬鹿なことが頭を走った。出発に際して、全く知らない大学の先生に今までのデータを送っておいた。本に書きたいから方法を連絡して欲しいという手紙が届いたが、マレーシアではそんな余裕はなかった。ただ南方産と北方産のダニがいて発育のスピードが違うのではないかと思っていたので、マレーシアでも少しダニの採集をした。帰国したら再開するするつもりだったが、出来なかった。
ジャラン、ジャランはマレー語で散歩する意味だ。塾の名はサイエンス・ジャランとした。しかし塾生はいない私の近くには科学を散歩する人はいないのか。



アジアの若者達が日本に憧れてやってくる。過去の悲しい歴史を乗り越えようとしている人も沢山いるだろう。

仕方がない次へ
塾の開講宣伝のため再度アップします。入塾希望者は参考に実験内容をご覧下さいなおリンクはページがありません。
 

きらめき錯覚 これで蛇は回転するか(立命館大学からリンクされているので残しています)
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土壌動物の実験

横軸は日数、縦軸は体長(ミクロンメーター)体長に変化がない時は休止期

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ニンヒドリン 不思議な結果です

面白い実験でたしかめる生物の不思議 2004年10月