セントジェルジェは筋肉収縮の研究でノーベル賞を受賞した。若者に失敗を恐れないで大胆に研究をすればいいと言った。ありきたりの結論は正しくてもそれだけのものだ。大胆な発想は仮に間違っていても科学の発展には大きく貢献するだろう。そんな趣旨のことを言った。ずーっと尊敬してきた。彼は代々医者の裕福な家庭で育った。けれども家系にあるまじき馬鹿だと言われていたらしい。祖父は彼を美容師の学校へ入れるつもりだった。彼は医者になりたかった。祖父は歯医者はどうかって言った。あまり、命にはかかわらないだろう。ジェルジェは医者になりたかった。祖父は肛門科の医者なら良いと言って折れた。自分が痔を患っていることもあり、命にも係わらないだろうから。家系にあるまじき一番の馬鹿だった。そう「狂ったサル」のなかで書いている。彼の最初の論文は「肛門の組織化学的研究」だ。読んだことはもちろんないが、きっと毎日肛門の切片を作っていたに違いない。
 筋肉はどのように収縮するのだろう。肛門の研究なんかすれば普通に疑問に思うだろうって思う。2種類のたんぱく質が滑り込むようにして収縮する。収縮するタンパク質があるわけではない。腐ったと思われるような実験終了と思われていた溶液から発見した。収縮のエネルギーはATPだから、リン酸の結合を切る酵素は2つのうちきっとどちらかだろう。自動車のボンネットのどこかに馬が隠れているに違いないなどと言って馬を探した時代だ。
 昔、学生時代のきっと最初の実験は永久プレパラートを作る実験だった。パラフィン埋没法だ。今ではきっと誰もやらないじゃないかと思う。けれども、すごい技術だ。生物の組織には必ず水が含まれている。パラフィンと水は混ざらない。だから生物の組織をそのままパラフィンに埋没することはできない。だから、組織が壊れないようにゆっくりとアルコールで順番に脱水していく。パラフィンはキシレンに溶けるから、アルコールからキシレンに移す。さらにゆっくりとパラフィンの割合を高めながら順番にパラフィンを浸透させていく。・・・実に見事だった。・・・僕は若い人はこの実験を必ず体験するべきだと思っている。人間の知恵が詰まっている。
 筋肉収縮のモデルをストローを使って作ってみた。太さがちょっと違う2種類のストローを使う。ストローは収縮はしない。けれども滑り込ませれば収縮する。思ったよりうまくできた。もう少し多くの筋原線維の束にするとよかったかもしれない。


最初の図は簡易カイモグラフで筋肉の収縮のしかたを低周波治療器を使って記録するための装置です。単収縮、不完全強縮、強縮を記録するものです。オルゴールを使いました。
とっぷう