光る大腸菌 遺伝子組み換え

日本で初めて高校生に高等学校で遺伝子組み換え実験を行った。私はDNAはやらないから、外部の講師に依頼すればいい。高校生に分かるだろうかとちょっと心配する先生がいるかもしれないが、面白いって思えれば心配はないだろう。もう何十年も前のことだ。高校時代私は化学の先生からDNAのセントラルドグマの話を聞いた。この説は1958年にでた。私は小学生だった。10年も立っていない新しいセオリーだった。

見事だと思って感動した。教科書にはもちろんなかったが、多分2時間、3時間もかけて話して頂けた。高等学校での化学の授業はこれとカルピスの話しか覚えていない。新しい時代が始まったと思えてきた。分かればいいが、分からないならそのうち分かれば良い。若者はちょっと背伸びをするのが良い。合い言葉のようにしてきたが、遺伝子鑑定も入れて、丸2日かかる実験、終わりに近づけば、近づくほど若者は実験にのめり込んできた。
 ここは三部制高等学校。実施は難しいかと思ったが、口走った。理科の先生が皆、賛成してくれた。時間割を変更しなければいけない。他の教科の授業をもらわなければならない。面倒だ。全部若い先生にやって頂けた。私は外部講師に依頼し、バイオラッド社の実験キットを入手するだけで良かった。本当は外部機関がついているから、ただで出来るが、学校へは数万円はかかるだろうと言った。気持ちよく応援してくれる気持ちを知りたかったから。ところが、問題が1つある。ここは三部制だ。夜も生徒がやってくる。外部講師は夜お願いするのは難しい。私はDNAはやらないから、若い女性の先生と理科助手にお願いした。テキスト通りにやれば誰でも出来るが、菌の処理も入れて、この実験の指導の資格を持ってみえたからだ。新聞社がやってきた。私はそんなつもりは全くなかったが、取材にきた。定時制高校でこんな実験をするのは初めてだろう。昼間にやってきた記者にはこういう学校にも光を当てて欲しいと言った。夜の実験にも新聞社がきた。実験が始まろうとしている時、若い本校の実験指導の先生が、厳しい顔をして怒ってやってきた。「実に失礼だ。」何があったのだろう。取材にきた馬鹿な新聞記者は「あなたがこの実験の指導をするのですか。」「高等学校の先生ですよね。何であなたがこんな実験の指導が出来るのですか」などと質問したらしい。嫌な思いをさせて申し訳なかった。私は生徒達に「この実験は資格がないと指導が出来ない」ことを説明した。「私はその資格を持っていない。」生徒達が言った。「私たちの先生はすごい先生なのか。」「そうだ。すごい先生だ。僕は資格がない。この先生がいないとこの実験はできない。」
 初めて白衣を着込んだ生徒は実に活き活きと真面目に実験に取り組んだ。多分一生記憶に残る実験になっただろうと思う。難しいと思えば何も出来ないが、自分でも出来ると思えば、何かができるだろう。簡単そうに見えるかもしれないが、うん、、かんたんだ。でも、準備は大変だ。培地作り、大腸菌の培養。授業の合間にやらなければならない。次の年も実施する気持ちはあったが、学校が実験をする意味を理解しなければ無理にやる意味はない。若い先生に嫌な思いをさせるだけだ。何処からもどうするかという確認はなかった。面倒だからやめた。

トップ 面白い実験でたしかめる生物の不思議