コロナ感染症の流行によって大学が苦境に立たされているらしい。講義が実施されていないらしい。一度も通学しないのに授業料を払わされる。夢を抱いて大学へ進学してきたのに。初めての大学生活なのに。授業はすべてオンラインだ。オンラインは、PCはすごいって、一瞬は思った。21世紀の授業はこれでないとって思った。でも、本当にこれで良いのだろうか。将来取り返しがつかない結果になりはしないだろうか。僕はPCは嫌いだから、どんな授業なのかよく知らない。けれども、好きにはなれないし、スマホはさらに嫌いだ。スマホは人間社会をおかしくするかもしれないと思っている。
 20年近く昔の話だ。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に申請した。何をどうするかって皆で話し合った。TV会議システムで大学と高等学校をつないだ授業の展開をしたらどうかって意見が出た。僕は本当は反対だった。けれども、一人でSSHをやるわけではないから特には反対しなかった。福井県立大学と繋いだ。少年自然の家で野外宿泊実験をしていたからだ。海藻の色素の講義を予定した。けれども使い方がわるければ、NHKの放送を見ている方がよほど良い。システムを構築するだけでも数十万から100万円する。これだけお金をかけても当時はネットで繋げるかどうかまだ怪しかった。国立情報学研究所が全面的にバックアップしてくれた。それでも、画面がフリーズする。システムを入れた多分NECだったように思うが、携帯電話でネットの状況を連絡しながら、大チームで授業を実施した。
 海で採集したわかめは茶色である。100円ライターで加熱すると見事な緑色になる。(ついでに100円ライターに火が付くシステムはどうなっている。火打石を持ってきたらいい)一瞬だ。クロロフィルの色だ。紅藻類の赤色はフィコエリトリンの色だ。吸収した光は光合成に使える。水溶性の色素だが、水に入れても溶け出てくることはない。乳鉢ですりつぶしてもなかなか抽出ができない。水溶性じゃないじゃなかろうかって一瞬思う。一日凍結しておくと水でも溶け出てくる。やってみればいい。実際にTV講義での指示に従ってやってみれば良い。大学に提案したが最初の年はできなかった。いわゆる授業だったと思う。前もって郵送しておくのは面倒だからだ。けれども、今は海藻はスーパーで売っている。
 最近ほとんど電車には乗らないが、ちょっと大病を患った。大学病院に通うことになった。普通に人並みだったのだ。電車内では本や新聞を読んでいる人はほとんどいなかった。皆、下向いて、スマホを見ている。何をやっているのかよく知らない。新聞も本も過去のものになりかけている。専門書なんかまったく売れないだろうって思う。こんなことで科学立国日本であり続けることができるのだろうかって思う。昔、本は自分で買った。ほとんど読みもしないのに。それでも、生化学、発生生物学、エルトンの生態学・・・・20冊ぐらいの専門書を読んで積んでいったことがあった。1900年代初頭に学べって僕は思ってきた。現代科学の出発点がそこにあるから。でも、今じゃそんなことは言ってられない。今世紀科学はPCの革命的発達によるかもしれないが、過去にないほど急速に発展したと思う。少なくともDNAは神の領域に踏み込んだ。
 さて、オンライン授業はきっと昔の本の役割ぐらいしかないかもしれないと思っている。オンラインが世界中で推奨されて来たが・・・・。ここへきてちょっと非難の声が出ている。大学へ行かないで大学生活をする。そんな無意味な大学は必要ない。NHKの大学講座を見ればいいわけだから。休学をしたいとか。ついでに大勢が一斉に休学すると再開するとき後から入学する学生を入れて2倍に膨らむ。さらに大変なことになる。
 PCは嫌いだから、オンライン授業も嫌いだ。けれども、それしかないと言うならば仕方がない。オンライン授業用の簡単実験キットを作ったらどうだろう。授業料の代わりに売れば良い。光合成色素のカラムクロマトグラフィー実験キットを昔考えたが、あれはエーテルを使うから、外へ出せない。入浴剤を使えば水で展開ができる。・・・・。オンラインでNHK講座のような授業をするなら日本の科学は絶滅するだろう。ついでだ。これは5ml注射器によるカラムクロマトグラフィー法だ。なんで色素が別れるのだろうかって、考えてほしい。展開溶媒は分離したい物質によっていろいろ変わる。が、究極は気体を流す。人類は自由に考えてきた。そんなことをいずれ学んで欲しい。
 

面白い実験でたしかめる生物の不思議