面白い実験でたしかめる生物の不思議 

 大学では光合成関係の研究室にいました。教員になった時この分野のことを深めていくことは不可能だった。学生時代、漬物の重しに使っていた青木淳一氏の「土壌動物」を初めてじっくり見た。日本には研究者はあまりいないと書いてある。それなら、私でも何かできるだろうって思って始めた。全く分からなかった。頭部の先に突起がある。ケバケバがあると書いてある。分からなかった。どれのことだろう。初めてってそんなもんだ。ケバケバは、突起はこれだって確信するのに一年掛かった。兄に頼んで、ブタペストで出版されていたササラダニの専門書も手に入れた。が、しかし、分からなかった。それなら、育ててみようと思った。この頃日本にはそんな人はいなかったと思う。
 左はトビムシの孵化の様子を撮影したものです。卵を見つけるのはそれほど難しくはありませんでした。ダニ卵と比べるとはるかに大きい。けれども、孵化させてみなければ卵なのかもわからない。まだ、ダニの卵は発見できませんでした。ダニ類の糞の大きさと同じぐらいだったから。それでもと思ってやや透明感のある糞のようなものを育ててみました。右はハバヒロオトヒメダニの最終休止期が脱皮するところです。・・・ちょっと何か出来そうでした。(何度も糞を育てた。カビが生えてくるだけだた。)
 ところでまだ、始めた頃のことだった。最後の授業にいった。最前列に見たことがない生徒が並んでいた。教室を間違えたと思った。入り口の表示板を見に教室を出た。間違いではなかった。「物理の生徒です。物理は自習になりました。最後の授業だから、今日はダニの話をしますよね。聴いていってもいいですか。」くだらない面白くもないダニの話を一時間聴いてくれた。一匹の名前を確信するのに一年掛かった。それだけを教えたかった。それも、目標のダニじゃなくて、中気門ダニだった。この生徒たちが今どうしているのか全く知らないが、少しは役に立ったと思うことにしている。半分青いの脚本家はふ〜む。教えたか記憶にないが、当時この学校にいた。

今日の一枚 第40 回 トビムシの孵化とオトヒメダニ最終休止期の脱皮

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