郵便局が玄関にやってきた。荷物です。???。不思議だった。受け取るような荷物がやってくる予定がなかった。よくわからないが、郵便局だけフルネームの署名が必要だ。ちょっと面倒だった。。なんでフルなのか、ちょっとイラっとしながら、送り主の名前を見ながら、サインをした。知らない名前からだったがすぐわかった。中身は本だった。「世界から守ってくれる世界」 塚本はっ歌著 産業編集センター発行とある。何年前だったろう。小説家になりたいと言って東京へ出ていった。勤めていた安定した職場を放棄した。「良いよね。」って、自分ではもう決めていただろうに。そーっと応援してきたが、スタートラインについに立った。一気に読もうと思ったが、もう、目がふらふらになる。2ページ読んで今一休みしている。読み終わるのは何時になるのか。PCの画面は疲れたら拡大すれば良いが、本はそうはいかない・会いたいが、握手をしたら、手を洗ったり消毒をしなければならない時代だ。逢わない方が良い。
 昔ある学校で文化祭があった。何をやろうかってクラスで話し合いになる。全然決まらなかった。それぞれグループでそれぞれやりたいことをやろうってことになった。僕と一緒にやるメンバーは4人だった。それも、どのグループにも入れないような個性の強い者ばかりだった。互いに話もしない4人だった。なんでこんなグループが出来たんだろう。
 光に関係するものをやろうと思った。偏光メガネを作って3D動画を作ろう。虹ビーズを使って虹を作ろう。今はほとんど使われなくなったOHPを使って、いろいろな色の影絵を作ろう。・・・。なんでもかんでも思いつくままに。4人のうちだれかが恐竜のアニメ動画を作りたいと言ってきた。面倒だが、それほど難しいことはない。アニメの作り方は生徒が知っていた。・・・。僕は前日まで重要なことに気が付かなかった。OHPを3台。ビデオプロジェクターを2台、再生デッキとTV。虹の制作用光源装置。等を使う。個々のブースはほぼ完成した。これでうまくいくはずだった。
 前日、文化祭の準備だ。4人で一部屋の準備をしなければならない。「先生、悪いけど、僕はよくわからん。僕ができることしか出来んで」って言ってきた。「うん。分かった」って言った。それで良い。まずは暗幕を持ってきて張らなければならない。「これならできる。」そう言って人一倍頑張ってくれた。
準備は完了した。さあ、実際にやってみようって全部の電源を入れた。ブレーカーが落ちた。真っ暗になった。普段は大抵何もやらないやつが一人原因を探してくれた。どうしてこんなに真剣になるのかと思った。いつも話もしない敵対するような仲間だったが、あいつが作ったアニメが上演できないからって言った。昔仲が良かった時もあるが、何があったのか知らないが、犬猿の仲になっていた。電源を回復させた彼はそれでも僕を介してからしか話をしなかった。「自分でできることしか出来んで」って言った彼はその後も自分ができるブースの説明をやっていた。・・・。成功したかどうかは分からないが嬉しかった。

 彼は卒業するとある製造業の会社へ就職した。工場のラインの一員となっていた。やがて頑張っているだろうって期待して進路担当の先生が企業訪問をした。「全然役に立ちませんよ。彼のところでラインが止まる。見てください。」そう言われて帰ってきた。よほどのことだったのだろう。普通、そんなことは言わないものだ。僕はなんならその会社へ訪問しても良いと思った。文化祭では自分ができることなら真剣に一生懸命やってきた。自信を持って僕は彼を推薦する。どうしようもなかったら行こうと思っていたが進路担当の先生を差し置いてはなかなか行けなかった。、行かなかった。その後2度目に訪問すると、彼は無くてはならない人になっていた。この仕事は彼しかできません。そう言われていました。何年経っただろう。頑張っているだろうって思うが、今偶然にでも出会ったら、離れろって言わなければならない時代だ。逢わぬ方が良い。

面白い実験でたしかめる生物の不思議