JT生命誌研究館からメールマガジンが届いた。多分月に1回とか2回とか発信される。時々、開いて見る。今回はアゲハ蝶の食性に関する動画があった。学校から離れてからはほとんど何もやっていないが、何気なく開いて見た。アゲハ蝶は柑橘類かせり科の葉だけを食べる。キャベツは食べない。モンシロチョウはキャベツを食べる。けれども、ミカンや山椒の葉は食べない。どちらも相当に偏食者だ。食べるとなったら彼らは相当の大食漢だ。枯れてしまうほどに執拗に食べつくす。まだ幼い植物なら枯れてしまう。どうしてこんな食べ方をするのだろうか。
 まず後半の問題からだ。食べる量を計画的に決めるなどというようなことは昆虫にはできないのだろう。順調に育っていた人参がいきなり元気をなくした。アゲハの幼虫が着いたのだ。放置しておけば人参は枯れてしまう。食べつくしてしまったら蝶は死ぬしかないのだろうか。f〜m。そうゆう場合もあるが、小さいまま蛹になって、小さいまま蝶になれば良い。どうしてこんなことができるのか私にはよくわからないが、幼若ホルモンや前胸線ホルモンは結構融通がきく。モンシロチョウぐらいの大きさのアゲハなら簡単にできる。食料を計画的に消費出来ない代わりに食糧飢饉にうまく対応する能力を獲得している。
 さて、前半だ。JT生命誌研究館によると、もしいろいろな植物を食べるなら、いろいろな物質に対する解毒能力を持たなければならないのだそうだ。なるほど。植物だって食べられるのは困るのだそうだ。そりゃあそうだ。葉を全部食べられたららおしまいだ。それぞれ、食べられないように毒性物質を作って対抗しているらしい。蝶の卵は直径0.5から1ミリ程度だ。孵化した一令幼虫の大きさは長さでも数ミリしかない。太さなら1ミリもないかもしれない。こんな小さな幼虫は少しでも毒性物質を食べたらひとたまりもないのだろう。一種類の植物しか食べないのならその植物が出す毒性物質に対する解毒能力を持つだけで済むのだそうだ。本当かどうか知らないが、なるほどと思う。
 集合誘引因子、噛む因子、咀嚼因子、飲み込み因子.ミカンの葉にはアゲハ蝶の幼虫に対してこれらの行動を誘発させる物質があるらしい。よくわからないからちょっと面白そうだった。むかし、ちょっとだけ実験をしてみた。実験には最も食欲旺盛な終齢幼虫がもっとも適当だと思われた。飼育することにした。この頃はまだ昔のカラタチの垣根が近くにあった。それほど難しいことはないが糞の管理は欠かすことができない。カビが生えてくると死んでしまう。糞だけ掃除すれば、餌になる葉だけやれば、水なんかはいらない。生き物を飼うには水が不可欠だと思って、水なんかやればカビが生えて幼虫が死にやすい環境になる。クモを飼うときと同じだ。当然のように水が必要だと思ったが、全く人間の浅はかな思いつきだ。獲物の水分で良いのか、代謝水で良いのか、水がなくても死にません。ゴキブリなら多分代謝水を使っていると思う。せんべいと一緒にビニール袋に閉じ込めたゴキブリは数か月生きていた。多分カイコでも同じだ。(カイコの卵は理科業者に販売されている。生の桑の葉が一番だが、人工の餌がある。糞にまみれるとカビが生えて死ぬ。けれどもうまく管理すれば繭になり、カイコ蛾が生まれる。卵もちゃんと産む。が、結構頑張らんといかん。)清潔な環境が大切だ。餌が足りなくても簡単には死なないから大丈夫だ。小さくなるだけだ。
 さて、実験だ。4つの因子があるとして、これらの物質はペーパークロマトグラフィーで分離することができるだろう。すると幼虫が集まるだけのところ、噛むだけのところ・・・。そんな場所ができるだろう。アゲハの終齢幼虫を使うのが良いと思う。力がある。モンシロチョウの幼虫でも良いと思ったが、ろ紙を食いちぎるほどの力がない。アゲハの終齢幼虫ならろ紙に噛みついて食いちぎる力がある。カイコでも良いかもしれないが、購入すると結構、高価だ。しかも、卵や一令から育てるから大変だ。一回実験している間に他の幼虫は皆蛹になってしまうのだ。でアゲハでやってみた。たしかに噛みつくだけのように見えるところと食ったところがあった。ヘキサンで展開したろ紙がちょっと面白そうだった。幼虫は多分近くのカラタチの葉についたものをこっそり抜けだして集めてきたと思う。当時はまだカラタチの垣根がまだ残っていた。最近はそんな垣根はなくなってきた。だから、新しい幼虫を新たに補充していくのは大変だった。で、やめた。頑張っても数種類の行動誘発因子にたどり着くだけだろう。幼虫が噛みついたり食いちぎったりした結果のろ紙はファイルに入れたまま出てこない。

 

とっぷう