アシナガバチと遊ぼう
  ちょっと危ない アレルギー傾向の人はやめましょう
(vol.3の原稿かもしれない。ひょっとするとこれは公表してはいけないかも) 
 ミツバチの生活はよく知られています。ダンスを踊るとか、羽音で距離を伝えるとか。そんな話がいろいろな本に書いてあります。でも、他のハチの生活はあまり示されていません。危険だからでしょうね。刺されたら大変です。スズメバチの巣には近づいてはいけません。刺されたら命が危ないから。でも、軒下とか木の枝とかについているアシナガバチの巣は採ったことがありませんか。子供の頃はよく採ったものです。刺されたら大変です。煙幕を使ってみたり、袋を被ってみたり、蚊帳を被ってみたりしたことはありませんか。棒を持ってたたき落とそうと思って逃げてきたりしませんでしたか。
 大変苦労したものですが、本当は相手がアシナガバチなら簡単です。3メートル以上4mぐらいの棒を使えば大丈夫です。物干し竿なら絶対大丈夫です。竿で巣を少し突っついてみて下さい。ハチの巣は大騒動です。棒にそって攻撃にきます。びっくりしますが、飛んでくるのは2mぐらいまでです。そこでひっくり返して巣に戻ります。結局彼らが防衛できるのは半径2mぐらいの空間までです。ついでに数回巣を突っついてみて下さい。攻撃に出てくる蜂の数は増えてきます。けれども、全部攻撃に出てくることはありません。どうしてなんでしょうか。9月頃から顔が黄色い雄がいっぱい出現してきます。確かに攻撃に出てきますが、全く怖いことはありません。刺さないからです。1っぴき捕まえて、押してみて下さい。刺すような振りをしますが、針がありません。この雄は全部雌を守るためのカモフラージュなのでしょうか。なお、蜂の巣取りなら、薄暗くなってからとか夜がいいと思います。攻撃に出てくることはまずありません。夜は巣から離れたら多分巣へ戻れないからです。
 
 
  それでは観察用のハチの巣をゲットしましょう
 
 アシナガバチは冬は多分、軒下とか・・で集団で越冬しています。春になって暖かくなると巣作りを始めます。6月か7月頃まで待ちましょう。その間に観察用の巣を入れる箱を用意して下さい。大きさは適当でかまわないと思います。多分雨は当たらないようにする必要があると思います。アクリル製の箱なら天井にベニヤか木を張り付けてください。ハチが出入りができるように開け閉めができる扉を付けておくといいと思います。陶器が入れてある木製の箱が一番いいと思います。この箱なら蓋もついています。瞬間接着剤と虫ピン、強力セロテープを用意して下さい。できたばかりの直径1から2pぐらいの巣を探して下さい。巣の横に雌バチがへばりついています。このハチは多分最初の巣作りと産卵と子育て以外の仕事はしないと思います。適当な巣を見つけたら3mぐらいの竿で落として下さい。この巣の柄の部分に瞬間接着剤を塗って、箱の天井に着けて下さい。10分もすればつくと思います。うまくいかないときは虫ピン、セロテープを併用してください。大きな巣では出来るだけスピーデイーにやってください。親のハチがもとの巣のあたりで巣を探しています。箱ごと近くに置いておけば、やってきます。これで観察用の携帯巣箱の出来上がりです。箱の蓋をするまでは危険です。夜とった方が安全です。観察しやすいところに移動して下さい。
 大型の巣をゲットするのは結構難しいと思います。危険です。朝9時前か、夜がいいと思います。まず攻撃にでることはないと思います。フタモンアシナガバチは結構大人しいと思いますが、コアシナガバチはもっと攻撃的です。羽を上げている個体がいれば、危険です。巣全体が興奮しているときはどこへ攻撃にでてくるか全くわかりません。以後の実験に置いても羽を振るわせている個体がいる巣の前にいるときわめて危険です。私は3回ほど刺されました。完全に巣は崩壊していると思っていたのに、新しい個体が誕生していることに気づかないで手を入れたからです。他の巣の個体を細い棒の先につけて差し入れているときに、思いもよらない所から攻撃に出てきたからです。
 時々、巣作りを放棄するハチがいます。数個作っておくのが良いかもしれません。
 
   それでは他の巣のハチがきたらどうなるのでしょうか
 
 アリは同じ種でも巣が異なれば、激しい戦いをします。ハチはどうでしょうか。まだ実験していませんが、そんな実験ができるんでしょうかって思いますね。アリと違って刺します。でも、できるんです。やってみませんか。霧吹きとバケツとカミソリを用意して下さい。ほかに糸と箸があれば準備万端です。
 ハチの活動範囲はどれぐらいかよくわかりませんが、巣から100mも離れていれば、きっと別の巣のハチだと思います。私のハチは飛んでいってもたかだか5m程度でした。密を吸っている最中に霧吹きで数回、羽に水をかけてやって下さい。飛べなくなります。でも、羽が乾くと飛んでいってしまいます。乾きそううになったら、又水をかけてやって下さい。
 飛べなくなったところを箸でつまんで水が入ったバケツに入れて下さい。羽が乾きそうになったら、箸でハチを水中に沈めて下さい。 チャンスをみてハチを箸でつまんでまな板の上に置いて、そのまま箸で押さえて下さい。ハチは針を出します。刺されないように注意して下さい。針を出したところで、カミソリで切り落としてしまって下さい。これでもうこっちのものです。もう全然怖くありません。手で捕まえても全く問題はありません。すぐ飛べるようになるので、一度バケツに入れて水中に沈めた方がいいかもしれません。細い糸を30pほど用意して、ハチの足を縛って下さい。糸の他端を3m以上の棒の先に縛り付けて下さい。棒の先にはハチがついています。巣の近くにこのハチを連れていったらどうなるのでしょうか。子供の頃を思い出してちょっとやってみようかと思いましたが、結構面倒です。でも、私は子供の頃よくやりました。鵜飼い漁師を気取って、数匹の糸の端を持って母親のところへ行きます。あれほど強かった母親が簡単にこのハチにびっくりして逃げていきました。ちょとだけ優越感が持てて、楽しい遊びでした。でも、あとで叱られました。はやく逃げた方がいいかもしれません。
 野外で一生懸命蜜を採取しているハチに気がつかれないように瓶を被せてください。エーテルを含んだ脱脂綿を入れて蓋をしてください。ハチはコロコロに麻酔されます。(バブの二酸化炭素でも麻酔ができます)80cmぐらいの竹籤の先に瞬間接着剤をつけて棒の先をハチの背中に寝ている間にくっつけてください。夜このハチを巣に近づけてみてください。(昼間は時として危険です。朝ならまだ安全です)激しく攻撃してきます。
 
 背中にペンキでマークをつけてマイハチの巣
 
 湯飲みの桐木箱に蜂の巣をゲットしてください。ハチが落ち着いてきたら、箱(アクリルの蓋をして)ごとビニール袋に入れてください。袋に水500mlほどの水を入れたビーカーを入れて、入浴剤バブを水にひとつ入れてビニール袋のチャックを閉めてください。一時間ぐらいで麻酔ができると思います。これだけで全員コロコロになりますが、これだけでは作業中に蜂が目を覚ましてきます。ハチに注意しながら、桐箱だけ取り出してください。エチルエーテルを含んだ脱脂綿を入れて麻酔してください。(作業が短時間なら必要はありません。)ハチはビニール袋の中で転がっています。細い棒の先にペンキをつけて、ハチの胸部にペンキを塗ってください。これでマイハチになります。ビニール袋からハチを出してください。どこかへ飛んでいってしまいますが、ハチの入り口は初めの巣と同じ方向にしておいてください夜には多分ハチの巣に戻ってきます。(でも十分麻酔されているなら、ハチを全部木箱に入れて蓋をして置いた方がいいかもしれません。)
 
 印をつけたハチを他の巣箱に入れて、一日閉じこめておきます。
 さあ、結果はどうなると思いますか。他の巣のハチにはペンキで印がついています。自分の背中にも色違いのマークがついているはずです。たまたまかもしれませんが侵入したハチはちゃっかり自分の巣にしています。ちゃんと子供の世話もしています。写真の白ペンキの個体は別のコロニーから侵入したものです。その下の写真の矢印の個体は自然に移住してきた個体です。ありの取っ組み合いをするコロニーとはずいぶん違います。
 後で述べますが、他の巣の個体が間違って侵入すると激しい攻撃をします。けれどもそのうちに他の巣に入り込んで真面目に働いている個体がでてきます。どうしてなんでしょうか。ありと同じように臭いが重要だろうと思いますが、よく分かりません。
 さて、ハチの背中にマークを付けるのは結構怖いですね。もし心配なら、大きい洗濯用の網を使ってください。巣箱を網袋に入れてください。チャックをして、タバコの煙などを吹き込んでください。
ハチは巣から飛び出てきます。厚手のゴム手袋をして(どの程度の厚みがあれば安全か分かりませんので、できるだけ手を使わないようにしましょう。)ハチが動けないようにして網の上からペンキで背中に色を塗ってください。袋をふんわりさせて置けばそのうち巣に戻ります。巣箱に蓋をして網から出せば良いと思います。できれば夜やってください。飛行せず、巣に戻れない個体がたくさん出てきます。本当はこの個体を棒の先に止まらせて巣に戻しておく必要があるかもしれません。でも、そんなことは無視してまずやってみましょう。特に午後はかなり活動的になっています。ちょっと危険です。
 
 
    携帯用アシナガバチの巣を使って実験
ハチはどうやって我が家に帰ってくるのでしょうか
 
 出ていったら(何処まで行くのかわかりませんが)帰ってきます。どこへ行くんでしょうか。何を頼りにしているのでしょうか。・・。
 太陽の位置を基準に方向を調べている。もっとも考えやすい。でも、本当でしょうか。実験しないと分かりませんね。巣をゲットしたときハチがどうしたか思い出してください。元の巣のあたりを探していますが、かなりのハチが巣の付け根のあたりに集まっています。もちろん巣はありません。きっと、このあたりに揮発性の臭い物質があるよな気がしましが、あなたはどう思いますか。太陽・臭い・・などを頼りにしているかもしれません。フタモンアシナガバチの活動範囲はたいしたことはないようです。私のハチはせいぜい半径5mぐらいのことでした。巣を出てからの活動時間もたいしたことはありません。目で見れば分かりそうな距離でした。
 右上の写真を見てください。上に赤コロニーの巣があります。下に緑コロニーの小さな巣があります。上の巣箱を夜のうちに反対向きにしましょう。どうなると思いますか。朝、出かけたハチは昨日と同じ方向から帰ってきます。そうすると箱の裏側になります。巣が見つかりません。そうすると今度は下の箱を探します。時々そのまま侵入します。これは大変です。緑コロニーの攻撃を受けます。びっくりして逃げでてくることになります。やがて周りを探して出てきたはずの入り口を発見して入ります。(出てきたはずの巣の方向が分からない。よく分かりませんが、可能性としては昨日帰らなかった個体がいるのかもしれません。)普通は午後にはより正常な活動にもどります。でも、まだ間違って帰るものもあります。さて、当然ハチは出かけるとき自分の巣の位置、入り口の方向をちゃんと記憶して出発するのかと思っていましたが、どうもそうでもなさそうでした。
 今度は夜のうちに上の巣を別の位置(5mほど)に移動してみてください。よく分かりませんが、2カ所へ帰ってきました。巣の場所に帰ってきたハチは問題ありませんが、昨日のところへ帰ってきたハチは大変です。巣がありません。緑コロニーの巣へ侵入することになります。緑コロニーの巣はまた大騒動です。隣の家の娘が飛び込んできたわけです。優しく迎えてくれるかと思うと全く違います。さて、どうしてこんなことになるのでしょうか。前日帰らないで翌日帰ってくるハチがいるのでしょうか。それとも、前日活動して巣の位置を覚えたグループと新たに活動する2つのグループがいるのかもしれません。(たぶん後者が正解だと思います) 
 今度は次の写真を見てください。昼頃正常に活動している左上の赤コロニーの巣を右下に置きます。右上の箱は親バチのいない空の巣がついています。ハチはまず@の箱に帰ります。巣がないことが分かるとAへ行きます。中まで入って確かめますが、子供がいないことが分かるとBへ行きます。またまた緑コロニーは大騒動です。しばらく探してやっと本当の巣を発見します。
 巣を出るとき自分の巣の位置を学習してでかけると思うのが普通ですが、ひょっとすると前日に学習して翌日もその位置に帰ってくるのかもしれません。今日学習し、新しく巣の位置をインプットしたものは新しい位置へ帰ってくるのかもしれません。
 ついでに巣の入り口に赤い画用紙を張って(夜やって下さい)数日後画用紙の色を変え、隣に赤いが用紙だけ置いてみて下さい。巣の周囲の色には全く関係なく正常に活動します。巣を大きい箱に入れておくと大きい箱の上端で巣を探しています。
 
 結局よく分からなかったのですが、いくつかの問題が残りました。いつかまた頑張ってみましょう。
 
@ ありと同じようにフタモンアシナガバチでも巣に他の巣から  侵入する個体があると激しい攻撃行動が起こる。けれども自然  に他の巣から移住してくる個体がいる。どういう場合に移住が  可能でしょうか。 
 
 @ ハチはどのように巣の位置を認識しているのでしょうか。太  陽の方向と巣の位置の方向が重要だろうと思います。けれども、  巣の入り口の方向を変えるとか、場所を変えると2カ所に帰っ  てきます。巣からでる時点ですでに帰ってくる位置が決まって  いるように思えます。が、どうでしょうか
 
   ちょっと危険ですが、やってみてください。
 
 
もうちょっと頑張ってみましょう。ハチのコロニーの帰巣行動には3種類のパターンがある?
 
 巣の位置を変えると、元の場所に帰ってくる個体と新しい実際に巣がある位置に帰ってくる個体とがいました。確かに昨日までの位置に帰ってくる個体がいますが、ひょっとすると朝帰りの不良の個体がいるかもしれません。そんな不良ハチがいるのかどうか確かめてみましょう。そんなに難しくありません。巣の箱に蓋をして、朝帰ってくる個体がいるかどうか確かめればすみますね。
 夜の間に箱に蓋をしてハチが外に出られないようにして、巣を移動しておきましょう。朝9:30〜10:00頃蓋を開けることにしましょう。蓋を開けるまでは昨日のところに帰ってくる個体はいません。蓋をあけると昨日までの巣の位置にハチが現れてきます。巣はありません。探し回っています。ついでに移動したハチの巣はどうなっているか見てみましょう。大変なことが起こっています。コロニーの大崩壊が始まっています。これはどうしたことでしょう。朝、飛び立った個体が巣から出られないとこのようにコロニーの大崩壊がおきます。起こさないようにするには9:00前に蓋を開ければ問題は起きません。
 大崩壊が始まったコロニーはその後どうなるのでしょうか。1時間以内にすべてのハチが巣を離れてしまいます。巣の中は空っぽになってしまいます。そのまま放置しておくと、夜には3分の1程の個体が巣に戻ってきました。残りの3分の1の個体は元の巣の位置に集団で野営をしていました。残りの3分の1程は行方不明者となりました。
 
最後によく分かりませんが、
 
 
 ハチはすべての活動・行動を遺伝子に任せることにしてしっまった生き物であると言っても良いのではないかと思います。けれどもこれでは幅のある変化のある活動ができません。遺伝的にいくつかの行動パターンを持った個体を持つことによって集団として幅を高めていると考えてみてはどうでしょうか。
 物干し竿でハチの巣をゆすってみて下さい。攻撃に出てきます。けれども、全員ではありません。再びゆすってみて下さい。もっと多くのハチが出てきます。けれども・・・最後まで巣にへばりついている個体が数匹います。
 朝、10時ごろ最初の個体が外出します。全員出て行くわけではありません。多分この個体はここへしか帰れないのではないでしょうか。この個体が巣から外へ出られないと巣の中は大騒動になります。一体これはどうしてでしょうか。
 巣を数メートル移動して見えない位置に置くと外出した蜂はもとの位置へ戻って、巣がないので探し回っています。けれども、もとの巣では普通に活動が行われているようにみえます。きっと個体数が減っているのではないかと思います。新たに巣の位置を学習した個体が活動しているのかもしれません。
 

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